真白が目の前の二人についてあれこれ考えるお話。台詞なし。


 まさか、お前が人を好いて胸を焦がす日が来ようとは想像していなかった。それも、生きる世が違う人間の男に。目睫の間で思いの絆に触れるのだ、死の訪れることのない私にとっても貴重な体験だと言わせてもらうべきだろうか。
 周囲は僻目をもってお前たちを見、ときには嘲るやもしれないが、そんなことを気にする必要はない。私もそんな野暮なことはしないさ。
 そりゃあ、十と何年も共にあったお前を、あの男にものの数年でまんまと奪われたことは悔しい。お前たちの思いを知った当初は、お前をあの男になどくれてやるものかと気負い立ったものだよ。だが、お前がそれで幸せだと思うのなら故意に口は挟まない。
 あの男も何も悪漢ではないし、寡黙で愛想は悪いが根は真面目で寛厚なやつだろうさ。私には遠く及ばないが、お前を守る強さも一端に持ち合わせている。それくらいは聞かずともわかる。お前があの男をどれだけ好いているかも、あの男がお前をどれだけ必要としているかもな。
 必死に違うと取り繕おうとも顔にその通りだと書いてあるんだ、その通りだろう。馬鹿にするのも大概にしておけ、私を誰だと思っているのだか。
 境の儀式には、道中出合った皆を呼ぼう。一部の輩は複雑な顔をするだろうが、いざお前たちを見れば祝福してくれる。思えばお前の晴れ姿などを想像するのはこれが初めてか。衣装に着られている気がしないでもないが、やはり紅白のそれと化粧は美妙なものがある。あの男は言わずとも妙に似合っているのが悔しい。
 その後は私のもとを離れるなりなんなりして二人で好きに暮らせばいいさ。まだお前の肩に陣取って共に歩んでいたい気持ちはあるが、折角なんだ二人きりでいたいだろう。
 いつか小さなもう一人を連れて二人笑って会いに来てくれれば私は至極嬉しく思うよ。男子か女子か、白髪か黒髪か、赤目か金目か、何れでも構わない。お婆ちゃんと呼ばれるのは癪なので、やはりお前が呼んでいたようにあの名で呼んでほしいな。本名は些か長く読みづらいから無理だろうさ、あの名でいい。
 ああ、今から待ち遠しいね。それで、ずっと思っていたんだが、お前たちはいつになったらお互いに思いの丈を打ち明けるんだい?